バスケのみかた

バスケットボールを様々な視点で紹介します

バスケットボールシューズがバッシュになるまで

バスケットボールシューズがバッシュになるまでのタイトルイメージ

 

1891年に考案されたというバスケットボール。1900年初頭には専用シューズが発売されます。現在、よく若い人たちがオシャレスニーカーの定番シューズとして履いている「コンバース キャンバスオールスター」、それがバスケットボールシューズのはじまりといわれています。

やはりバスケットボールは運動として縦横に俊敏に動く必要があり、またコートは室内で整っているので止まる、回るなどの動きが頻繁に行えます。そのため、靴底(主にソール)はゴム製で上部は捻挫などの怪我を防止するためにくるぶしを隠すように高くなっていきました。私が中学生の頃はまだ入学したての新入部員は学校で揃えてシューズを買うなんていうこともありましたので、全員古いタイプのシューズを履いている学校もありましたね(懐)。

やはり安全性が重視されたシューズ形状はバスケットボールシューズの一番の特徴です。

スポーツとはいえオシャレしたい

とはいえ、時代は変わり21世紀です。シューズも発展を遂げ、いまではくるぶしが見えるシューズも登場しています。そして昔みたいにみんな同じようなシューズではなく、個性的なシューズを履いています。そう、特にバスケットボールのシューズは他競技に比べ個性的でファッション性が高いのです。なぜ、バスケットボールのシューズは個性的になったのか。きっかけのひとつにあの神様が関係しているかもしれません。

バスケットボールの神様ことマイケル・ジョーダンはデビュー当時こそはそこまで期待されていませんでした。しかし、将来性を有望視し目をつけたのが「ナイキ」です。ジョーダンと大型の契約を結びウエア、シューズの提供を開始しました。そこで生まれたのがあの有名な「ジョーダン1(NIKE AIR JORDAN 1)」です。当時NBAにはユニフォームのカラーから逸出ししたカラー、極端にいえば白以外のシューズは認められていませんでした(あのアメリカらしからぬ縛りですよね…)。しかし、お分かりの通りジョーダン1は赤と黒のシューズ、むしろ黒ベースに赤いアクセント(またはその逆)のシューズだったのです。ナイキは「自由を獲得」するという実にアメリカらしい発想を使ってNBAのルールを逆手に取ったプロモーションを仕掛けたのです。もちろんNBAからはジョーダンへ罰則が発生しましたが、そのお金はすべてナイキが払ったとの情報もあります。

これを機にバスケットボールシューズは様々なカラーが登場するようになり、今日のスニーカーブームのスタート地点になったといっても過言ではないでしょう。

心技体の精神に反するバスケットボールシューズの見た目重視

ときにスポーツは精神性を重視する部分があります。「どんな時も平常心」「ネバーギブアップの心」など、それはとても厳かで平坦な起伏のない状態です。つまり、チャラチャラしていてはダメ!「オシャレ」なんてもってのほかで、シューズに気がいってしまい起伏のある感情がでてしまうようでは、アスリートとして失格なのです!…なんてことをいわれれかねないのがスポーツ、いや「スポ根」ってやつなのです。好き嫌いは別として、こういった精神論ももちろんスポーツには必要な部分だと思います。

ではなぜ派手なシューズがこんなにも登場するのか?それは、バスケットボール(ここではプロスポーツとして)は「エンターテイメント」を利用したスポーツビジネスだからです。小さい子供がテレビでバスケ中継を観る→カッコいい選手を見つけて応援する→憧れの選手のようになりたいと夢見る、←ここにビジネスチャンスがあるのです。憧れの選手と同じシューズを履いてプレイしたいという発想を商品にしたものが「シグニチャーシューズ」いわゆるレプリカモデルです。こういった商品が長年繰り返されることで、派手になり、バリエーションが増え、商品数が爆発的に増えていったのです。

大半のバスケットボール選手はアマチュアじゃないか、そんなエンタメ性いらないだろ!という声が聞こえてきそうですが…その通り!私も同感です。多くのアマチュア(ここでは部活をやっている子供に焦点を当てましょう)選手は1足のシューズを半年~1年、長ければ2・3年と履き続けることになります。そんな時にマジックテープのついたシューズは果たしてその効果を保ち続けられるだろうか?ニット素材のシューズは形状をキープし続けられるのだろうか?という疑問に当たるわけですね。なので、派手で人気のモデルが必ずしも万人にフィットするわけではない、ということは覚えておいてください。むしろ、日本人に特化していえばクッション性が強すぎるものより硬いものを好まれる傾向にあるように思います。

大事なモチベーションをバスケットボールシューズでアゲる

一昔前なら、ポジション別にシューズのタイプを選ぶなんてことはよく言われてました。センターの選手はハイカット(くるぶしが隠れるような)モデル。ガードの選手はローカット(くるぶしが出る)モデル。フォワードは軽いモデル…なんてことを言っていましたが、21世紀・令和の現在はどうかといえば、さほど気にしなくていいと思います。バスケットボールもポジションレスといわれる現代において、背の高さや体格でシューズを選ぶのはオススメしません。できれば多くのシューズを店頭で試着して好みにあったシューズ、なにより形状関係なく気に入ったシューズを選んでほしいです。やはり大事なのはモチベーションですから。

最新テクノロジーの集大成

とにかくバスケットボールは多くの運動性を求められます。走る・止まる・飛ぶ・着地する…様々な運動を秒単位でこなすスポーツです。そんなスポーツのシューズだからこそ、強く発展・進化をしてきています。クッション性、軽量、強度にはじまり、現在では履き方も進化しています。今までは紐を縛ることで締め付け、足へフィットさせていました。しかし今ではジッパーで補強したり、ワイヤーを使って締め付ける機構(ナイキのパワーレース)が開発されたりしています。現在マラソンを始め陸上界でナイキの俗にいうドーピングシューズが話題ですが、バスケットボールでもすごい跳ねるシューズとか出てくるのかもしれません(好き嫌いでいえば好みではないですが)。

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出典:NIKE(左:Nike Adapt BB 2.0/右:パワーレースエンジンのイメージ)

逆に見れば消えない技術というのもあります。例えばナイキの「Zoom」。これはナイキ特有のエア機構を薄くソールの中に配置する技術です。一見エアが少なくて人気ないのではと思われがち、エアマックス(読んで字のごとくエアが限界まで装備されたもの)の方がクッション性高いじゃないかと思われがちなのですが、バスケットボールは止まってすぐに走り出すような俊敏性が必要なので、適度なクッションと反発するような硬さも必要なのです。そういった側面もバスケットボールシューズ選びには欠かせない要素なので、人気モデルじゃなくてもあなたにあったシューズはきっとありますので、ぜひ店頭での試着をオススメします。

やっぱりバッシュって最高

長々と書きましたが、もはやバスケットボールシューズは発展をしすぎて原型を留めていないのかもしれません。つまるところ、「バッシュ(バスケットボールシューズの略)って最高だ」ってことです。かっこいいし、モテそうだし、機能的。恥ずかしながら、私がバスケ始めたきっかけはバッシュが履きたかったからです。これもバスケットボールの立派な魅力だと思います。

最後に2019年に起きたバッシュ事件をひとつ。まだ大学生だったNBAペリカンズ所属のザイオン・ウィリアムソン選手の話。名門デューク大のエースとして活躍していた彼の体格は198cm/129kg。体当たりされたら軽トラックに突っ込まれたくらいの衝撃といわれています。そんな彼は2月のアメリカの大学リーグNCAA1部のゲームに先発出場。開始40秒、ボールをもらってステップを踏んだだけでバッシュが壊れる(つま先の脇側から裂けた!)という事故がありました。当時履いていたのはナイキのPG2.5という人気のあるモデルで、履いている選手も多かったです。当時からザイオン選手は超有力選手で毎試合全米が注目するような選手なので、「ザイオンのバッシュが壊れた!」「恐るべき怪力!」などと話題になりました。この直後のナイキの株価も下落へ反応したというのも話題でしたね。


Duke's Zion Williamson Injured Early In North Carolina Game

出典:Youtube/ACC Digital Network

こういった事故やトラブルも次の開発の肥やしになっていき、進化していくのですね。

バッシュの話はまだまだ尽きません。また別の記事もエントリーできるよう準備を進めようと思います。